運送会社を新たに立ち上げると、すぐに、適正化指導員が巡回指導が行われることになっていますが、運輸開始から日も浅いため、巡回指導の通知が来ても右も左もわからない状態です。
では、新規事業者の巡回指導では、適正化指導員から、主にどのような点を指摘されるのでしょうか?
今回も、適正化指導員をしていたカトウさんに経験談を交えてお話していただきます。
1)適性診断
今回、運輸開始してはじめての巡回指導を経験する運送会社が、特に指摘されやすい点について、元適正化指導員のカトウさんにお話を伺いたいと思います。
事前に指摘されやすい項目を知っておけば、総合評価D・Eを避けることができるのではないでしょうか。
最初の質問です。
新規に立ち上げた運送会社は、”適性診断”で指摘されることが多いと聞きました。なぜ、”適性診断”で指摘されることが多いのでしょうか?
運送会社を新たに立ち上げるには、”トラック運転手”が必要になりますが、新たに雇い入れた運転手は、全員、”初任診断”を受診させなければいけません。
そのため、はじめての巡回指導では、運転者全員が(義務診断を受診しているか)調査対象になってしまいます。
はじめての巡回指導は、運輸開始後3か月以内に行われると思うのですが、それまでに運転者全員を受診させておくのは大変ですね。
そうなんです。
地域によっては予約が取れず、3~4名受診させたけれど、残りの運転手は受診できていないケースもありました。
巡回指導の通知が来て、慌てて受診させようとしても予約が取れないので、余裕をもって対応することをおススメします。
初任診断は、”運転者に選任する前に受診させる診断”なので、運輸開始をする前に受診させるのも一つの方法ですよね。
運輸開始する運送会社は、とくに気を付けておきたいところです。
2)特定の乗務員に対する特別指導
次に、指摘されやすい指導項目として”特定の乗務員に対する特別指導”をあげられていますが、主な理由を教えてください。
これも”新たに雇い入れた運転者”がらみなのですが、初任診断だけでなく、社内でも教育をする必要がありますよね。
その社内教育(特定の乗務員に対する特別指導)には、”初任運転者に対する教育”と”事故歴の把握”があるのですが、とくに、”事故歴の把握”を取得していない事業者が多いです。
”事故歴の把握”は、雇い入れる前の事故歴(過去3年間の事故歴)を自動車安全運転センターで取得すればいいですよね。
郵送でも受付してくれるので、運転記録証明書を取得するのは簡単だと思うのですが…。
たしかに取得するのは簡単です。
”必要事項を記入して郵送するだけ”ですから。
ですが、運転記録証明書取得の義務化が遅かったのか、初任診断ほど、まだ馴染みがありません。
そのため、運転記録証明書を取得していないことが多いのです。
運転記録証明書を取得しなければいけないことを忘れている・知らない運送会社が多いのですね。
本当なら、適性診断を受診する前に取得する必要があるので、これから運送会社を始める人は忘れないようにしておきたいところです。
3)健康診断
続いて、健康診断が指摘される項目のようですが、これも”新たに雇い入れた運転者”に関連するのでしょうか?
はい。これも関連しています。
新たに運転者を雇い入れると、会社は”雇い入れ時の健康診断”を実施しなくてはいけません。
そのため、巡回指導では、初任診断と同様に、雇い入れ時の健康診断を行っているか、全員分必ずチェックしていきます。
私の感覚では、トラック運送会社は、定期健康診断を実施していても、雇い入れ時の健康診断は行っていないような気がします。
これは、新規事業者だけでなく、トラック運送業界全体が指摘されやすい項目ではないでしょうか。
おっしゃるとおりです。
雇い入れ時の健康診断の認知は以前よりは増えていますが、受診させていない運送会社が多いのも事実です。
適正化指導員もそれをわかっているので、新たに雇い入れた運転手がいた場合は、健康診断の受診状況について細かく確認しています。
なぜ、運送会社は雇い入れ時の健康診断に躊躇するのですか?
せっかく雇い入れても、次の日にはいなくなっていた…ということも多々あるみたいですね。
そのため、運送会社側としては、”定着するまで費用を掛けたくない”というのが本音のようです。
また「定期健康診断で受診させれば問題ないじゃないか。」と主張してくる運送会社もけっこういます。
たしかに、数日、働いてドロンする運転手も多いみたいですね。
運送会社の気持ちもわかります。
トラック運送業界は、高齢化していることもあって、健康起因事故が増えているので、労働基準監督署や支局も”健康診断の受診状況”には過敏になっています。
重大事故が発生した場合のリスクを考えると、健康診断は受診させておいたほうがいいと思います。
4)運輸安全マネジメント
次に指摘されやすい項目は、”運輸安全マネジメント”みたいですね。
運輸開始したばかりの運送会社は、”運輸安全マネジメント”への取り組みについて問われても、何をどうしたらいいのか、よくわからないのではないでしょうか?
そうですね。
既存の運送会社でも「”運輸安全マネジメント”って何?」と質問されることが多いです。
運輸開始したばかりの運送会社はなおさらでしょう。
運輸安全マネジメントについて、インターネットで調べても様式がほとんど公開されていないですよね。
指摘されて初めて気が付く運送会社も多いかもしれませんね。
神奈川県トラック協会のHPに公開されていますので、その様式を使用するといいでしょう。(⇒HPはこちら)
作成例もあるのでわかりやすく、すぐに完成できるかと思います。
様式と作成例を公開しているトラック協会もあるのですね。
私も参考にしたいと思います。
5)運行管理規程・整備管理規程
あと忘れがちなのが、”運行管理規程”と”整備管理規程”の保管ですね。
トラック協会のHPに公開されているので、巡回指導が始める前に、プリントアウトして、ファイルに綴じておくといいですよ。
私の知り合いも巡回指導の通知が来るたびに、最新の”運行管理規程”と”整備管理規程”をプリントアウトして、当日、指導員に提示しているところがありました笑
じっさいは、そのような運送会社が多いかもしれませんね。
新規の運送会社の担当者さんも忘れずに管理してくれたら嬉しいです。
まとめ
貴重なお話ありがとうございました。
新規の運送会社は、新規採用したトラック運転手の教育や健康診断で指摘されることが多いことがわかりました。
最後にまとめとして、気を付ける点があれば教えてください。
巡回指導の通知が来ると、どのような書類を閲覧されるか、一覧表が記載されています。
その一覧表をもとに(ダンボールにファイルをまとめておくなど)すぐ提示できる準備を整えておけば、慌てずに対応できると思いますよ。
あ~わかります。
私も、どこにファイルがあるのがわからず、慌ててしまったことがありました。
事前に準備しておけばその心配はなくなりますね。
コメントを残す