一般貨物自動車運送事業といえば、”トラック運送会社”をイメージしますよね?
ですが、トラック運送会社だけではありません。
霊柩事業者も一般貨物自動車運送事業に該当するのです。
なぜ、霊柩事業者も巡回指導の対象になるのか?
巡回指導では、どのような点に注意すべきなのか?
など、適正化事業実施機関の元指導員の視点からお話を伺いしました。
1)法律上、遺体は”貨物”扱い
一般貨物自動車運送事業は、トラック運送会社を対象にしていると思っていました。霊柩事業者も含まれるのですね。
ビックリしました。
ええ、はじめて聞く方は驚かれる人も多いですね。
一般的に”人”を乗せる場合、旅客なのですが、ご遺体になると法律上、貨物と同じ扱いになります。
そのため、私たち適正化指導員は、霊柩車を所有している霊柩事業者も巡回指導にお伺いすることになります。
なるほど。
ただ、霊柩事業者側からすると、一般貨物自動車運送事業に含まれているとはいえ、トラック運送会社が主の法律を遵守しなければいけないことに不満を感じるのではないでしょうか。
そうですね。
過去、とある霊柩事業者に、運輸支局名で巡回指導の通知を送付したのですが、中身も確認せず「私たちには関係ない」と破棄されたこともありました。
巡回指導の通知を無視するのは、トラック運送会社ではありえないですね(笑)
なかには、事前に巡回指導の通知を出していたにもかかわらず、当日、「葬儀が入ったのでお断りする」と追い出す方もいます。
確かに葬儀は、突然、ご依頼があるのでわかるのですが、霊柩車を所有している以上、巡回指導に対応しなければいけません。
毎回、葬儀を理由にドタキャンされると、支局に通報せざるを得ない場合もあります。
話を聞いていると、まだまだ霊柩車を所有する霊柩事業者の”巡回指導の認知”は低いようですね。実施するため、説得するのは大変そうです。
2)法令遵守の意識が低い
巡回指導の通知文書への対応を聞くと、巡回指導でも苦労されてそうですね。
「当社は葬祭業がメインで運送ではない。」
「輸送の安全について細かすぎる。トラック運送会社と同じにしないでくれ。」
点呼記録簿や定期点検の記録簿の提示をお願いすると、よく言われるコメントです。
霊柩事業者は、一般貨物自動車運送事業でも特殊なものとして捉え、法令を守っていないにもかかわらず、いいわけや開き直りが多いです汗
霊柩事業者の気持ちもわかるのですが、管理を疎かにするのはマズいですね。けれど、最低限のことはしているのでは?
最低限のことすらしていない霊柩事業者もあります。
なかには、”36協定”や”健康診断”すら実施していない霊柩事業者もあって、一般貨物自動車運送事業以前に法人としてマズイ事業者がたくさんありました。
36協定や健康診断など一般貨物自動車運送事業うんぬん関係なく、作成しなければいけないことを伝えても理解が得られず、改善しないことがありました。
聞く耳を持たない事業者には、本当に苦労をさせられます。
36協定や健康診断すら実施していない会社があるのですね。
なかなか手ごわそうです。
3)行政監査が増えている
霊柩事業者が、一般貨物自動車運送事業の中でも特殊な位置にあるのはわかります。
ですが、なぜ霊柩事業者の法令遵守がここまで低いのでしょうか?
霊柩車は、ご遺体を運んだり、ご遺族を乗せたりしているので、交通事故に繋がるような危険な運転をすることはありません。
重大事故等がなければ、当然、行政監査が行われることはありませんので、帳票類の整備について、軽視しているのかもしれません。
確かに、霊柩事業者で行政監査が行われた話はあまり聞きませんよね。
交通事故や重大事故がなければ、適正化指導員も運輸支局も強く指摘することもなかったかもしれませんね。
そうだと思います。
私たち適正化指導員も「霊柩事業者だから…」と甘くしていたところもあったと思います。(地域差による)
運輸支局も同様に行政監査の優先順位を下げていたかもしれませんが、近年、霊柩事業者の行政監査も実施されています。
確かに霊柩事業者もチラホラ行政監査の実績で見かけるようになりました。交通事故などもあったと思いますが、その他、理由があるのでしょうか?
適正化事業実施機関の権限が増えて、①速報制度、②総合評価D・Eに対する対応など、行政監査につながるパターンも出てきましたよね。
巡回指導を甘く見ていると、痛い目に合う時代になりました。
今後は、霊柩事業者も法令に沿って、帳票類を揃えた方がよさそうです。
4)特に気を付けたい帳票類は?
巡回指導では、帳票類を揃えなければいけないのはわかるのですが、特にどのような項目ができていないのでしょうか?
”教育関係”ができていないことが多いですね。
新規許可を得た運送会社と同じで、右も左もわからない状態だと思いますので「新規許可を得た運送会社が巡回指導で指摘されやすい項目5選」が参考になるのではないでしょうか?
- 運転者台帳を全員分作成する
- 教育記録簿を作成する
- 初任診断・初任運転者の教育を実施する
これだけでも、総合評価の引き上げにつながりますよね。
はい。
特に、霊柩事業者は調査項目が少ないので、違反項目があれば、すぐに総合評価D・Eになってしまいます。
ひとつでも多く取り組みをしておかなければ、今後、行政監査の対象になってしまうかもしれないので注意してください。
5)巡回指導を甘くみない
総合評価D・Eの事業者に対しては、改善文書に対応しなければ行政監査。たとえ、改善文書を提出しても、半年に1回の巡回指導が行われますよね。
さらに、3回連続、総合評価D・Eだった場合、行政監査が行われるようですが、これは霊柩事業者も対象になるのでしょうか?
はい、該当します。
だから、霊柩事業者は、今後、「巡回指導なんて適当に聞いていればいい」と甘い考えでいると痛い目に合うのは確実です。
すでに半年に1度の巡回指導の対象になっている事業者が多数出てきて、慌てて帳票類を揃えている会社も多いようです。
杜撰な管理をしている霊柩事業者は、今後、行政処分等されて淘汰される可能性があるということなんですね。
このブログを見ている霊柩車を保有している霊柩事業者は、きちんと管理するキッカケにして欲しいと思います。
コメントを残す